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 3成分系PbZrO3-PbTiO3-Pb(Mn1/3Sb2/3)O3圧電
 セラミックスの電気的及び機械的特性
 化学食品部 ○北川賀津一 豊田丈紫
 金沢大学 北川和夫
 防衛大学校 山本孝

研究の背景
 近年,圧電セラミックスはハイパワー用途に用いられる場合が増えてきている。また,ハイパワー用途の圧電セラミックスとしては,ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)に第3成分のペロブスカイト強誘電体化合物を加える3成分系圧電セラミックスが提案されている。本研究では,第3成分にPb(Mn1/3Sb2/3)O3を選択した3成分系圧電セラミックスを合成し,電気的及び機械的特性を調べた。

研究内容
 PbZrO3(以下PZと略す),PbTiO3(以下PTと略す),Pb(Mn1/3Sb2/3)O3(以下PMSと略す)を各々750℃で合成してX線回折パターンを調べた結果,PZは斜方晶系,PTは正方晶系のペロブスカイト構造を示したのに対し,PSMは単独では合成されず,Pb2Sb2O7とPb2MnO4の混合相を示した。一方,等モルのPZとPTに対してPMSを0.05ないし0.10モル置換すると,ペロブスカイト単相が合成できた。PMSの置換量が多いほど結晶化は進みやすく,ペロブスカイト構造がより低温で生成していた
 PMSの置換量を変えた場合の圧電特性を図1に示す。電気機械結合係数kpは置換量の少ない0.05モルで最も高い値を示し,機械的品質係数Qmは0.075モル添加で最も高い値を示した。
PZとPTの組成比を変えた場合の圧電特性を図2に示す。kpは組成比によって大きく変化し,圧電特性値を最大にするにはPZとPTの等モル組成比が最適であった。なお,この組成近傍が相境界であると思われる。
添加剤のない3成分系圧電セラミックスを電子顕微鏡で観察すると焼結が進まず空孔が多数存在していた。PMS置換量を増やすと空孔は減少したが,圧電特性値は最適値よりずれた。ストロンチウムとマンガンを少量添加すると焼結状態が著しく改善された。

(図1 PMS置換量と圧電特性)

(図2.PZとPTの組成比と圧電特性)

研究成果
 PZTはQmが700であり,ハイパワー用圧電セラミックスとしては圧電特性値が低いが,今回,PZ:PT=50:50,PMSを0.05モル置換し3成分系とすることによりQmを1400にまで上げることができた。また,kp=57%,4点曲げ強さも82MPaと高い値を示し,ハイパワー用途の圧電セラミックス製造に可能性を見出すことが出来た。

論文投稿
 粉体および粉末冶金 Vol. 51, No. 2, 2004. p.65-70.




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