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 文字への加工を利用したハードコピーへの情報ハイディングの一提案
 ■電子情報部 ○林克明 上田芳弘
 金沢工業大学 岩田雅士
 金沢大学工学部 木村春彦

研究の背景
 近年はインターネットをはじめとしたネットワークの発達により,電子文書の流通が容易になった。それにともない,情報を伝達する媒体として用いられてきた紙の使用頻度は低下している。しかし,紙には保存媒体としての優秀性,読みやすさなどの利点から,今後も使用され続けると考えられる。そこで,紙に印字されている文書を対象に,文字の一部分に切断加工を施すことを利用した情報ハイディングの手法を提案し,その有効性を示す。

研究内容
 情報ハイディングは,ある情報を別の情報に隠す情報処理技術の一つであり,例えば,写真などの画像ファイルに,肉眼では分からないように著作権情報(作成者名や識別コード等)を埋め込んで,不正コピーを防ぐことに用いられる電子透かし技術などがある。しかし,電子透かしは,印刷することにより透かし情報が欠落してしまうことがある。また,電子透かしは冗長性がある画像を対象とすることが多く,テキストを対象とした報告は少なく,さらに印刷物を対象とした報告はほとんど見あたらない。
本研究では,図のように文字の一部に一カ所の切断加工を施すことにより,1文字で1ビットの埋込情報を表現できる。すなわち,8文字で8ビットの埋込情報を表現できるので,JISコード表を利用することにより,アルファベットやカタカナなど,およそ157種類の文字情報をハイディングすることが可能である。また,本手法においてハイディングされた情報は,目視で確認できることも特徴である。本研究では,1)最適な切断加工幅の条件,2)実際に情報をハイディングし,読み出すことが可能なこと,3)第三者への情報漏洩の可能性が低いことなどを確認した。


(図 情報を表現するために加工された文字の例)

研究成果
 印刷されたテキスト文書を対象とした新しい情報ハイディングの手法について,以下の結果を得た。
(1) ハイディングされた情報はパソコンなどを用いることなく目視で容易に読み出すことが可能。
(2) ハイディングされた情報が第三者へ漏れる可能性が低いことを実験で実証。
(3) 印刷されたテキスト文書へ情報ハイディングが可能なことにより,情報追跡などの応用が可能。

論文投稿
 情報処理学会 Vol. 44, No. 11, 2003. p.2817-2825.




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