研究の背景 マイクロマシン等の機械の超小型化に伴い,微小部品の組み立てや部品間のガタの問題などを解決することが必要になっている。そこで,一般機械のように部品の組み立てを前提にするのではなく,同じ機能を発揮する連続体構造に置き換える方法が注目されている。現在,弾性変形によって変位変換機構をもつような連続体(機能的連続体)の設計には,てこを利用したメカニズムモデルから段階的に変換する方法が提案されている。しかし,多数のてこを配置する複雑なメカニズムを考案することは困難な作業であり,このようなメカニズムは,連続体に変換した段階で,剛性の影響による変形自由度の制限や局部的な変形によって要求機能を発揮できなくなる問題が生じている。 研究内容 本研究では,弾性変形によって変位を拡大させる単純構造の機能的連続体を基本モデルとして取り扱い,そのような機能的連続体同士を組み合わせることによって必要な変位拡大機能を満たすように全体構造を求める設計手法を検討した。 まず,基本モデルの設計では,最初に単純なメカニズムモデルを提案し,これをフレームモデルに変換して断面形状や長さの最適化を行い,最後に連続体構造に変換する手法を提案した。さらに機能的連続体同士の組み合わせたときの力学的挙動の定式化を行うことによって,変位拡大の設計条件を求める計算式を導き,この計算式によって最適な連続体の寸法を求めていく手法を提案した。 この設計手法の有効性を評価するため,図1のような2つの設計領域に分割した変位拡大デバイスの設計モデルに対し,図2のようなデバイスA,Bの機能的連続体の基本モデルを適用した例を示し,有限要素法(FEM)解析を用いた計算シミュレーションを行った。 (図1 変位拡大デバイスの設計モデル) (図2 機能的連続体の基本モデル(1/2対称)) 研究成果 (1)変位変換機能をもつ連続体を組み合わせたときの変位挙動を求める定式化を行い,変位拡大機能を向上させる設計条件を示した。 (2)本手法を用いて,2つの単純構造の変位拡大デバイスを組み合わせる設計を試みた結果,各デバイスの入出力部の変位比と剛性係数を計算式に適用するだけで,変位拡大率を最大化するデバイス構造が求められ,提案した設計手法の有効性が明らかになった。 論文投稿 日本機械学会論文集(A編). Vol.68, No.670, 2002, p.873-878. |
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