1.目 的 二酸化チタンは光触媒としての利用され始めている。しかし,各種部材表面に塗布する光触媒溶液は,一部のメーカーが独占的に供給している状態にあり,作製面でのコスト削減等の技術的課題がある。また,光触媒としての統一的な性能について評価法が確立していないので,製品の簡便な評価法の確立が求められている。 そこで,本研究においてはディップコーティング法による皮膜形成のための溶液を調整し,タイルを基板として光触媒皮膜形成を行ない,光触媒としての機能を評価する各種試験を試みた。また,基板材料の拡大を目的としてガラス板の上に二酸化チタン皮膜の形成を試みた。さらに,紫外線以外のエネルギーによる二酸化チタンの触媒機能発現の可能性について検討した。 2.内 容 2.1 皮膜形成 基板に光触媒溶液を塗布し,固化させるゾル−ゲル法を用いた。溶液は,チタニウムテトライソプロポキシドを一定比率のエタノールで希釈して作製した。その溶液を基板に塗布する方法として,ディップコーティング法を用いた。 2.2 機能評価 光触媒による機能評価について以下の3種の試験を行なった。 (1) 二酸化チタン皮膜形成したタイルを用いて工業試験場管理研究棟屋上に放置して行なった暴露試験 (2) 二酸化チタン皮膜形成したタイルに青色染料であるメチレンブルーを塗布し,その分解の程度をもって光触媒機能を評価するメチレンブルー法 (3) フッ素樹脂バッグに基板と所定濃度の試験ガスを入れたものを紫外線下に置き,一定時間照射後の試験ガス濃度の減少率を測定して評価するガスバッグ法 2.3 超音波による触媒機能発現 光以外の超音波を励起源とすることの可能性について試験した。試験は,径が約2mmの二酸化チタンボールをガラス管にメチレンブルー水溶液と同時に封入し,外部より暗状態で超音波を照射した時のメチレンブルーの分解率により触媒機能発現の検討を行なった。 3.結 果 (1) 膜の物性 二酸化チタン光触媒溶液に浸漬したタイルを乾燥し,550℃で加熱処理を行なった。この操作を5回繰り返して行なった。タイルに形成された皮膜のXRDパターンを(図1)に示す。図から二酸化チタンの結晶系の一つであるアナターゼ型が形成されていることが判る。また、繰り返し回数が多いほど明瞭であるが、大きな相違は認められなかった。 (図1 石英基板へ形成した皮膜のXRDパターン) (2)機能評価 光触媒皮膜の有無のタイル表面に油性マジックインキで模様を描き,各々を工業試験場の屋上で10日間放置する暴露試験をした結果,皮膜を形成したタイルの表面上の模様は綺麗に除去され目視で明瞭に光触媒機能を確認できた。 メチレンブルー法の試験結果を,(図2)に示す。図は、縦軸に色差の変化、横軸に時間を示した。皮膜が無い場合には,24時間経過しても大きな変化が見られなかったが、皮膜が有る場合には色差が半分以下になりメチレンブルーの分解を定量評価することが可能であることが判る。 (図3)には、ガスパッグ法の試験結果を示す。ガスの初期濃度に因らず,1時間程度で分解していることが判る。また、皮膜が形成されていない場合でも、ガス濃度が減少しているのは、ガスのバッグ等への吸着によるものと考えられる。 (図2 メチレンブルー法による試験結果) (図3 ガスバッグ法による機能性評価試験結果) (3)超音波による機能発現 (図4)には、超音波照射時間とメチレンブルー水溶液の透過率を示した。図から,超音波の照射時間の増加に伴い,透過率が上昇している。これは、メチレンブルーの分解が進んでいることが判る。 (図4 照射時間による透過率の変化) このことから,二酸化チタンは紫外線以外の励起源,即ち超音波からのエネルギーを直接或いは間接的に励起源として触媒作用を示すことが明らかとなった。このことは,これまで大気中心に二酸化チタンによる浄化技術の展開がなされたが,今後は水処理への応用展開の可能性をも示唆するものと考えられる。 |
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