フレーバー評価システムの活用事例  ―棒茶の香り成分の特徴把握―

 食品の香りは、味や食感と並んで、食品のおいしさを決める重要な要素です。香り成分を分析することは、食品の品質管理や新商品開発、異臭の原因調査に役立ちます。工業試験場は、香り分析による製品の差別化や新商品開発を支援して欲しいとの業界要望を受け、香り成分の分析装置「フレーバー評価システム」を整備しました。この装置は、酒、菓子、野菜など様々な食品を分析することができます。

 石川県で古くから作られている棒茶は、茶の茎を焙煎したほうじ茶で、香ばしく甘み豊かな香りが特徴です。しかし、その香り成分の科学的評価による詳細は明らかになっていませんでした。工業試験場は、石川県立大学、(株)丸八製茶場(加賀市)と共同で、同一条件で焙煎した茎と葉で、香り成分に違いがないかを調べたところ、茎は葉よりも香ばしい成分が1.5倍、花(バラやラベンダー等)の香りの成分が4倍多く含まれていることが明らかとなりました。これにより、葉を主に用いる「ほうじ茶」よりも、茎を用いる「棒茶」のほうが香り豊かなことが、科学的に証明されました。

 本装置を活用して棒茶の焙煎条件の最適化、原料選定基準の確立を行うと共に、香りに注目した地場食品の高品質化、付加価値向上、新商品開発に取り組んでいきます。

フレーバー評価システム
棒茶 茶の茎と葉の比較(花の香り成分)

フレーバー評価システムと分析例

 

担当:化学食品部 笹木 哲也(ささき てつや)

専門:食品化学、分析化学

一言:香り分析で地場食品を支援します。