漆塗膜中硬化剤の分析が可能に  ―熱分解ガスクロマトグラフ質量分析装置の活用事例―

 漆は独特の艶やかさや肉もち感から美術品や実用品へ利用されていますが、伝統的な刷毛塗りに加えて、塗装効率の良さからスプレー塗装も行われるようになってきました。スプレー塗装をする際、塗膜が早く乾燥するように漆に硬化剤を添加する場合もあります。一方、家庭用品品質表示法では事業者に製品の品質に関して適正に表示することを求めています。これを受けて、平成20年12月に日本漆器協同組合連合会では、「漆に対して硬化剤配合量が10%以内のとき“漆塗装“と表示できる」とのガイドラインを各産地に通達しました。

 これまで、工業試験場では、フーリエ変換型赤外分光光度法(FT-IR)を用いて漆塗膜の分析を行ってきましたが、分析精度が不十分で、企業の硬化剤の定量という要望に応えることができませんでした。そこで、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析法を用いて、漆塗膜中硬化剤の分析を検討しました。この方法では、塗膜の混合成分を分離することができるため、硬化剤含有量の定量が可能となり、業界の要望に対応できるようになりました。

 熱分解ガスクロマトグラフ質量分析法は、塗膜分析に限らず異物分析にも有効な方法です。異物分析でお困りの際には、ぜひご相談ください。


熱分解ガスクロマトグラフ質量分析法による漆ウレタン混合塗膜の分析結果

 

担当:繊維生活部 藤島 夕喜代(ふじしま ゆきよ)

専門:分析化学

一言:まずは、お声かけください。