銅マイグレーションの加速評価法と対策  ―電子基板のコート材に必要な条件を明らかに―

 屋外や高温多湿下で使用される給湯器、織機、空調制御機器などの電子基板には、防湿、防水および防虫対策のために封止膜をコートしています。しかし、封止膜があっても、銅マイグレーション(電極から溶出した銅イオンが電位差によって他方の電極に移動すること)により、図左のように銅生成物が枝状に成長し、短絡故障(ショート)が発生することがあり、対策が求められています。

 銅マイグレーションの再現性試験としては、従来、高温高湿試験で1ヶ月以上必要としていました。結露サイクル試験(結露が発生するように低温と高温高湿を急峻に繰り返す試験)を採用することで、1日程度で再現できることを確認しました。本提案の試験法で、透湿性、吸湿性などの特性の異なる種々の封止膜コート材を評価した結果、銅マイグレーションを防止するために最も重要なのは、銅イオンを溶出させる物質を含まないことでした。結露サイクル試験結果の例として、銅イオンを溶出させる物質が残留しているアクリル樹脂は、図左のように20時間後に銅マイグレーションによりショートしました。一方、防止条件を満たすフッ素及びシリコーン樹脂では、図右のように120時間後にも銅生成物を発生しませんでした。この解析結果から、銅生成物の成長を6分の1以下に抑制できることが確認できました。

 今後、マイグレーションを防止する封止膜コート材を塗布した電子基板の品質向上に貢献していきます。

アクリル樹脂コート基板
20時間後
フッ素樹脂コート基板
120時間後

結露サイクル試験結果

 

担当:電子情報部 筒口 善央(どうぐち よしてる)

専門:電子材料

一言:電子部品故障にお悩みの際は気軽にご相談ください。