工業試験場として50年

場長 吉田 繁 [よし だ しげる]

 

 石川県工業試験場は、昭和37年4月に繊維工業試験場、機械工業指導所、工芸指導所の3機関を統合した総合試験場となり、今年で50年を迎えました。

 石炭から石油へのエネルギー革命により、本格的な高度経済成長が始まった頃でありました。

 その後、エレクトロニクスや新工業材料など、めざましい技術革新の時代が到来し、そのような社会の変化に対応するため、県は、工業試験場や各指導機関、業界団体等を集積した産業振興の拠点づくりを目指して、昭和58年8月に産業振興ゾーンの中核機関として、工業試験場を現在の地に移転、新築し、近代化を図りました。

 平成に入って、技術者研修、共同研究、試験計測機器の開放等の技術支援施設として「石川トライアルセンター」を2年に、新分野での産学官連携を支援するための「新分野創造開発支援センター」を8年に、中小企業のものづくりを支援するための「モノづくり支援センター」を14年に整備いたしました。

 この間一貫して、県内企業のものづくりを支援する立場から、陣容の強化や施設・設備の充実を図り、時代に即応した研究体制の整備に努めて参りました。

 一方、この50年間の本県の経済規模は、製造品出荷額等で見ると、昭和37年の1,600億円余から平成22年の2兆3,000億円余と目覚ましい拡大を遂げております。

 しかし、近年の社会経済状況は、国外ではリーマンショックやヨーロッパでの経済不安、アジアでは中国がGDPで日本を抜いて世界第2位になり、世界の生産拠点・大消費地として台頭するなど大きく変動しております。国内経済においては、東日本大震災の影響や歴史的円高による国内市場の縮小傾向などから、本県の中小企業は、海外・国内企業との激しい競争に晒されており、グローバル市場を視野に入れた更なるものづくり技術の高度化、新製品開発や新分野進出が必要不可欠な状況になってきております。

工業試験場が発足し50年を迎えたロゴマークです。無限大の記号をモチーフにし、スピード感を表しています。3本の線は3機関の統合と研究開発・技術指導・試験分析の3分野の柱を意味しています。

 そのため、県では平成21年度に「石川県産業革新戦略」の中で、基幹産業の更なる競争力強化や次世代産業の創造などを基本戦略と定め、この方針に基づき、炭素繊維関連と機能性食品関連の次世代産業の創造を支援する「次世代産業創造支援センター」を平成23年度に開所して、ものづくりの基盤技術及び次世代産業の支援に取り組んでおります。

 私たちは、諸先輩が築いてきた工業試験場50年の足跡を振り返りつつ、新しい50年の創造に向かって、県内企業のニーズを踏まえた「研究開発」、「技術指導」、「試験分析」の3分野を柱として、今後とも本県産業の振興や企業支援の充実に努め、産業界の発展に役立つよう取り組んで行く所存でありますので、ますますのご支援、ご協力をお願いいたします。