漆の硬度および耐光性向上  ―無機粒子の配合によるインテリア用黒漆の開発―

 黒漆塗りの家具は、器物を置いた跡や擦り傷が目立ちやすく、また、直射日光で変色するといった問題があります。工業試験場では、これまでにナノオーダーの無機粒子を漆液に配合することにより、漆塗膜の変色防止や耐洗浄性の向上を図る技術に取り組んできました。そこで、本技術をもとに、漆液に複数種の無機粒子を配合し、黒漆の塗膜硬さと耐光性を改善する研究を行いました(科学技術振興機構:研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP))。

 その結果、硬度向上に関しては、漆液に酸化亜鉛粒子2%とシリカ粒子溶液5%を配合することにより、圧し込み硬さ(ダイナミック硬度)が従来の黒漆と比べて、約1.6倍に向上することが分かりました。引っかき硬さ(鉛筆硬度)に関しては、酸化亜鉛粒子2%とアルミナ・シリカ粒子(合成珪藻土)16%を配合することにより、Fから4Hへ4段階向上しました。また、耐光性に関しては、酸化亜鉛粒子を2%配合することにより、促進耐光性試験288時間後で黒味の変化を約1/2に低減できました。

 今後は、本研究で得られた結果を基にして、開発した漆の商品化を図るとともに、さらに新しい漆の用途展開についても技術支援して行きます。


漆塗膜の硬さ

 

担当:繊維生活部 梶井紀孝(かじい のりたか)

専門:漆製造、工業意匠

一言:新しい技術、製品の開発を目指します。