刃物用溶接金属の開発  ―耐摩耗性に優れた肉盛溶接用新粉末材料―

 産業廃棄物等の粉砕機では、その対象物が金属、プラスチック、ガラス等、多種多様であり、その粉砕用刃物には、耐摩耗性(硬さ)と耐クラック性(靭性)という相反する性質の両立が求められます。そのため、図1に示すような肉盛溶接工法によって靭性の高い母材の上に厚さ数mmの硬質合金層を形成する手法があります。しかし、苛酷な使用環境下では、交換周期が短いことが課題となっています。

 工業試験場では、特殊電極(株)白山工場との共同研究により、肉盛溶接用の新粉末材料を開発しました。この開発では、耐摩耗性と耐クラック性を両立させるため、サーメット合金中に微細な炭化物を析出させた合金組成や肉盛工法を検討しました。その結果、耐久性を社内従来品比で約2.5倍に向上できました。

 開発した肉盛溶接材料を図2のような廃プラスチック処理設備用刃物や、ゴム押出機のスクリュー等に用いれば、長寿命化を図ることができます。なお、摩耗した既存部品の復元再生にも利用できます。これにより、刃物の交換周期の延長や安定した機械運転が実現されるため、保守コストの大幅な低減が期待できます。

 機械製品の摩耗や破損でお困りの方は、どうぞお気軽にご相談ください。



図1 肉盛溶接された粉砕用刃物
 
図2 廃プラスチック処理設備用刃物への応用

 

担当:機械金属部 鷹合滋樹(たかごう しげき)

専門:材料強度、破損解析、表面処理

一言:モノづくり技術と評価技術を組み合わせ、新製品を世の中へ!