熱可塑性樹脂複合材料の研究  ―コミングル法による複合材料の成形―

 樹脂と強化繊維を用いた複合材料は加熱・加圧することにより一体化させて製造されており、軽量で高強度であるため、鉄代替部品として注目されています。このうち、熱可塑性樹脂複合材料は、熱で軟化する熱可塑性の樹脂を強化繊維で補強した材料ですが、樹脂の粘度が高く、強化繊維間に浸透しにくいために空隙(ボイド)が発生し、十分な強度が得られないことがあります。

 そこで本研究では、熱可塑性樹脂を繊維化して、強化繊維の間に配置させ、成形時に熱可塑性繊維を溶かすことで複合化する「コミングル法」について検討しました(図1)。この方法は、予め強化繊維間に熱可塑性繊維を配置することにより、樹脂の浸透性を向上させることが期待できます。本研究ではポリフェニレンサルファイド(PPS)を繊維化し、アラミド繊維に混繊した後、プレス成形で複合材料を試作しました。その結果、ボイドの低減にはプレス成形条件が重要で、コミングル法では予備加熱を行うと効果的であることが分かりました(図2)。

 今後はこの技術を発展させ、他の樹脂や強化繊維にも活用できるようにしていきたいと考えています。


図1 コミングル法による複合材料成形
 
図2 PPS/アラミド複合材料の断面観察

 

担当:繊維生活部 奥村 航(おくむら わたる)

専門:溶融紡糸、フィルム成形

一言:新しい技術、製品の開発を目指します。