乳酸発酵による米糖化液の低臭化  ―アルデヒド類の低減化効果―

 甘酒に代表される米糖化液(こめとうかえき)には、原料由来のアルデヒド類やアルコール類が多種含まれるため、固有の風味を持っています。特にアルデヒド類は少量でも匂いを感じやすく、人によっては不快臭と感じられる成分であり、米糖化液の風味に大きな影響を与えています。一方で乳酸菌により適切な条件で発酵すれば、食品の匂いが改善できる場合があります。そこで、米糖化液を乳酸菌(ラクトバチラス・プランタラム)で発酵させたところ、低臭化した米糖化液を得ることができました。

 ガスクロマト質量分析計により米糖化液の発酵前後の匂い成分を比較すると、3種のアルデヒド類が発酵時間の経過に伴い低減化し、最終的に消失したことが確認できました。さらに、これらのアルデヒド類と化学構造的に対応する3種のアルコール類が増加していることも確認できました。従って、米糖化液の低臭化は乳酸菌が持っている酵素により、アルデヒド類(不快臭)が爽やかな匂い成分であるアルコール類に変換したものと考えられます。

 工業試験場では、今後、本技術による低臭化米糖化液の商品化を目指すとともに、他の食品にも活用し、新たな低臭化食品の開発を行いたいと考えています。なお、本研究は「地域伝統発酵食品に学ぶ先進的発酵システム構築と新規高機能食品開発」(文部科学省:地域イノベーションクラスタープログラム(都市エリア型)H21-23)の一環として実施しました。


発酵前後の匂い成分の比較

 

担当:化学食品部 勝山陽子(かつやま ようこ)

専門:応用微生物、食品衛生

一言:乳酸発酵の活用を推進しています。