土壌修復用微生物製剤の開発  ―トレハロースの添加で微生物の生残性が大幅に向上―

 土壌汚染対策法が施行されてから、年々、土壌修復ニーズが増しています。一般的に汚染土壌は掘削除去で修復されていますが、油汚染土壌については油を分解する微生物を用いて安価に修復できるため、近年はこの手法を用いて修復するケースが増加しています。

 しかし、使用される微生物製剤は、輸入製剤が主流であるため、国内土壌の適用性や安全性の観点から国産化が望まれていました。また、製剤中の微生物は、徐々に死滅するため、生残性を向上させることが必要とされていました。

 工業試験場では、土壌汚染物質の分解に関する研究に取り組み、A重油を分解する微生物を見い出すとともに、本微生物を用いて製剤化条件を検討し、生残性を高めた微生物製剤を開発しました。

 製剤化は、具体的には凍結乾燥保護液(スキムミルク5%、グルタミン酸Na1%、トレハロース5%)に菌体を加え、-30℃で凍結することで製剤化した結果、従来よりも30倍以上生残菌数を増大することができました(1年相当の加速試験結果)。

 今後は、本成果の実用化に向けて、県内企業への技術移転を図っていきます。なお、本研究はJST平成20年度シーズ発掘試験(発掘型)により実施しました。


微生物製剤の作成方法

 

担当:化学食品部 井上智実(いのうえ ともみ)

専門:微生物工学

一言:工試で分離したA重油分解微生物の長期保存が可能になりました。