さわやか酸味の清酒を商品化  ―選抜酵母でリンゴ酸を往来の2倍に―

 近年、食の多様化や嗜好の変化に伴い、洋食に合うワインなどが増加し、清酒の売り上げが伸び悩んでいます。このため、県酒造組合連合会からも清酒の多様化を図り、石川オリジナルな清酒の開発が求められていました。

 工業試験場では、若年層や女性をターゲットとして、清酒の旨味を残しつつ洋風料理とも相性の良いワイン感覚の(酸味のある)清酒に着目し、さわやかな酸味と言われるリンゴ酸を多く生産する酵母を選抜しました。これまでにもリンゴ酸酵母は開発されていますが、発酵力に課題があったため、今回の酵母は県内酒蔵の清酒もろみや育種した変異株などから3株選抜しました。小仕込試験の結果、いずれも対照とした協会酵母9号(K-9)と比較して、リンゴ酸量が1.5〜2倍高く、アルコール量も遜色のない清酒が得られました。

 そこで、県内企業を対象にこれら3種類の酵母を用いた試醸酒のPRを行ったところ、3社から利用の希望があり、早速1社が清酒を醸造しました。その結果、小仕込試験と同様、リンゴ酸量の高い清酒が得られ、さわやか酸味の清酒として商品化されました(図)。残る2社も今年度中に仕込、熟成などの工程を経て、各社独自のコンセプトで商品化、販売を行う予定です。

 今後、開発した酵母のPRに努めるとともに、新規酒米「石川門」を用いた石川独自の清酒開発を行い、酒造業界の支援を行っていきます。


商品化された酸味清酒

担当:化学食品部 松田 章(まつだあきら)

専門:醸造

一言:日本酒を見直してみませんか?