大型内外装パネルの開発  ― ビール濾過助剤の再利用 ―

 ビールの製造プロセスには、濾過助剤で酵母や凝固物を除去する工程があります。白山市のキリンビール(株)北陸工場では、毎月10トンから35トンの使用済みビール濾過助剤をセメント原料として有効利用しています。ビール濾過助剤の大部分はプランクトン遺骸の珪藻殻で、多孔質な非晶質シリカから構成されています。そこで、この良質で安価なシリカ源をより付加価値の高い大型内外装パネルに有効活用するための研究開発を進めました。

 パネル開発にあたっての課題は、通常の製品に比べて寸法(1m角×7mm厚み)が大きいことと、普通に焼くと欠けや割れが発生することでした。そこで、ビール濾過助剤に適量の粘土を添加し、パネル形状に成形しました。さらに、有機物の分解する温度域の昇温を緩やかにすることで、欠け割れの発生率を大幅に減少できました。最終的には、パネルの欠け割れが発生せず、高い強度を確保することから、ビール濾過助剤の添加量を20%としました。開発したパネルは、かさ比重1,1、熱伝導率0.16W/mK、曲げ強さ25.5MPaで、パネルに必要な断熱性能と機械的性能を達成しています。

 本研究は平成19年度JSTイノベーションプラザ石川FS事業の研究成果です。大型内外装パネルの試作を(株)アースエンジニアリングに委託しました。現在、当社ではこれらの成果をもとに、立体駐車場の外壁材などの建築資材へ応用を考えています。


大型内外装パネル

担当:化学食品部 北川賀津一(きたがわかづいち)

専門:無機材料工学

一言:原料をリサイクルすることで資源、燃料を節約した製品が開発できるよう努力していきます。