電子部品の接合強度試験  ― 鉛フリーはんだ化への対応 ―

  電気機械製造業では、2006年からのEUのRoHS規制に始まり、国内製品においても、電子部品のプリント基板へのはんだ付けに、鉛フリーはんだが使われるようになってきています。

 鉛フリーはんだは、従来の共晶はんだに比べ、はんだ付け接合強度が大きいというデータが国のプロジェクト研究(JEITA鉛フリーはんだ実用化検討成果報告書2006)等で報告されています。しかし、鉛フリーはんだは、製造条件の許容範囲が狭く、(1)フィレット(はんだ盛りのすその形状)が形成されにくい、(2)ボイド(蒸気の泡)が多く発生しやすい、(3)接合界面層の厚みで脆くなる、などの短所を持つため、はんだ付け接合強度が十分得られない場合も少なくはありません。そのため、信頼性を確保するには、電子部品のはんだ付け接合強度を実際に評価する必要があります。

 工業試験場において実施しているはんだ付け接合強度試験(技術ニュース2004 VOL.29 No.2参照)について、一例として、QFPのリード端子の45度プル試験をご紹介します。試験は、万能試験機((株)島津製作所 AG−5kNI)と専用治具の組合せで行っています。図1に示すように、45度に傾斜させた基板上のQFPのリード端子1本をプル治具先端のフックに引掛けて引っ張ります。鉛フリーはんだと共晶はんだの試験結果の例を図2に示します。縦軸は引っ張り荷重[N]、横軸は引き上げ時間[s]です。この場合は、共晶はんだ付けでは5.5Nで破断に至りましたが、鉛フリーはんだ付けは10Nで10秒以上保持しても破断していません。これまでの共晶はんだでの市場実績から考えて、鉛フリーはんだ付け接合強度については、十分であると判断できました。この例のように、鉛フリーはんだ付けの接合強度評価では共晶はんだと比較することが望まれます。

 なお、JIS Z 3198などの鉛フリーはんだ対応規格試験によれば、鉛フリーはんだ付けの接合強度は破断または剥離に至った最大荷重で評価します。しかし、先に示した試験例では、治具強度に10Nの制限があったため、共晶はんだにおける「表面実装部品の引き剥がし及び固着性(せん断)のはんだ付け接合強度試験」(IEC68−2−21)で、規定されている10Nで10秒間程度の保持に倣い、試験評価を行いました。現在は、治具の変更により、最大荷重20Nまでの評価が可能です。

 工業試験場では、本稿で紹介したJIS試験以外に、コネクタ部品等の挿入部品やフレキシブルケーブルのはんだ付け接合強度などの実物強度試験も、治具の条件が適合すれば実施できます。ぜひご相談ください。

図1 QFP リード端子の45度プル試験の実施例 図2 QFP リード端子のはんだ付け接合強度試験の結果例
(条件:ロードセル:50N 、試験引上げ速度 1mm/min )

 

担当:電子情報部 筒口善央(どうぐちよしてる)

専門:電子材料

一言:共晶はんだから鉛フリーはんだへラインを切り替える前に、試してみませんか。