ハイブリッドナノダイヤモンド(HND)膜の開発
〜さらなる硬質膜の実用化を目指して〜

図1 HND膜の開発イメージ
 各業界で使用される工具、金型、機械部品などは、ますます高精度化、高機能化、長寿命化が要求されるようになっています。それに応えるため、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜などの実用化により、材料の硬度や摩擦摩耗特性の改善が図られています。しかし、近年ではさらなる高硬度が要求され、これまでにない超硬質膜の開発が期待されています。
 我々はこれまでに、複雑形状物の外面および内面へDLC膜やセラミック膜を均一に成膜する技術開発を行ってきました。この研究成果を基に、新たに産学官共同研究により、 従来のDLC膜の平滑性に加えて、ダイヤモンドの高硬度を兼ね備えたハイブリッドナノダイヤモンド(HND)膜(図1)の研究開発を行っています。
 これまでに開発した成膜装置を用いて、DLC膜とナノダイヤモンド(ND)を交互に積層することにより、基板上にHND膜を成膜し、硬さや摩擦摩耗特性等の機械的特性を評価しました。図2は、DLC膜、ND膜、HND膜の硬さを比較したものです。その結果、HND膜は、DLC膜に比べて約2倍の硬さが得られ、摩擦係数は非常に小さい約0.1を実現しています。
図2 硬質膜の硬さ測定結果
 また、HND膜の切削工具への適用を検討するため、 当場のモノづくり支援センターに設置したNCフライス盤を用いて、アルミニウム(A5052)の切削試験を行っています。一般的には、アルミニウムを切削する場合に問題となるのは、アルミニウムの切屑が切削工具に付着し、切削性能が低下してしまう"溶着"現象が生じることです。そこで、本フィールドテストでは、アルミニウムの溶着を観察して性能を評価しました。その結果、コーティングしていない超硬工具に比べて約100倍の性能(切削距離)が得られることが分かりました。
 今後はフィールド試験の結果をフィードバックさせながらHND膜の完成度を高めるとともに、新機能をもった超硬質膜のさらなる用途(図3)の模索を行い、各業界で活用されるようPRを行っていきます。
 なお、本研究開発は、平成13〜16年度独立行政法人科学技術振興機構・研究成果活用プラザ石川の育成研究事業(プロジェクトリーダー:粟津薫工業試験場機械金属部長、参加機関:金沢工大、(株)オンワード技研、工業試験場)として行われているものです。

図3 HND膜の用途


担当 機械金属部 安井治之(やすいはるゆき)
専門 表面改質、イオン注入、材料力学
一言 新機能を持たせた超硬質膜の用途開拓をご一緒に!



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