玄米酒、低精白米酒の開発
−米糠排出を抑え、香味バランスの良い清酒の検討−

 清酒造りの原料米処理工程では、通常、玄米を30〜50%以上削り(精米歩合70〜50%%以下)、多量の米糠を排出しています。玄米または精白度の低い米(低精白米)を用いて香味の良い清酒が製造できれば、米糠排出の抑制と省エネルギーにつながります。しかし、玄米を用いて清酒を造る際には、溶解性の低さや玄米特有の臭いの問題があり、香味バランスの良好な玄米清酒は未だ開発途上にあるのが現状です。
 工業試験場では、焙煎処理で米表面を高温(200℃以上)にさらし、米表面のタンパク質の変成や脂肪酸の揮散を促して溶解性の向上と、焙煎香味を付与して香味を改善する方法を検討しました。この焙煎方法と通常の蒸す方法とで精米歩合を変えて清酒の試醸を行いました。
 その結果、焙煎処理では玄米を蒸す場合に必要な圧砕処理が不要でした。また、玄米酒や低精白米酒は、蒸し、焙煎ともに酸度が高く、クエン酸含量が高いことが特徴でした。しかし、玄米特有の臭いは残りました。精米歩合90%で、これらの臭いとクエン酸含量は大きく低減し、精米歩合90〜100%で清酒の香味バランスは大きく変化することがわかりました。
 これまでに、精米歩合90%の低精白米を用いて焙煎処理を行い、焙煎風味のアルコール度数13〜15%の清酒を製造する方法をほぼ確立しました。

図 各清酒中のクエン酸含量


担当 化学食品部 松田 章 (まつだあきら)
専門 醸造
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