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カプセル化分散染料のポリエステル布への染色特性
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沢野井康成* 堀照夫**
*繊維部 **福井大学工学部
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研究の背景
水を媒体とする染色方法では,水資源やエネルギーを大量消費する上,その排水処理対策が大きな課題となっている。このため,環境負荷を低減する各種非水染色法の研究開発が行われてきた。筆者らは,先に染料の昇華性を利用する染色方法として,昇華性染料と強磁性材を含有したマイクロカプセル(以下,MC-dye)を用いたポリエステルの乾式染色法を考案した。これまでに,MC-dyeからの分散染料のPETフィルムへの拡散では,染料の昇華がカプセル化や強磁性材によってそれほど阻害されないことを報告してきた。本研究では,MC-dyeを塗布したポリエステル白布を熱処理した場合の染色特性について検討を行った。さらに,MC-dyeを用いて作製した染色試料と高温高圧染色法で作製したものについて,耐光性と色相を比較した。
図1 試作装置
図2 試作装置による連続熱処理試験結果
研究内容
試験には,市販されている高純度の分散染料,撥水処理磁性材,シェル剤(ポリメチルメタクリレート)の割合が,仕込量で5.0:20.0:75.0の黒,黄,赤,青の各色MC-dye(平均粒子径:4〜8μm)を使用した。カプセル化は,懸濁重合法を用いた。MC-dyeの染色特性を調べるための熱処理試験は,MC-dyeを塗布したポリエステル白布を,2枚の加熱版(JIS
L 0854)で挟んで,所定の温度と時間処理した。その結果,熱処理の方法および温度・時間を調整することで,良好に発色できることが明らかになった。この結果から,図1に示すMC-dyeを布に連続的に吸引・付着させて熱処理試験するための装置を試作し,連続熱処理試験を行った。加熱ロール温度を200℃とした時の熱処理時間と表面染色濃度(K/S値)の関係を,図2に示す。熱処理時間とともにK/S値も次第に高くなっており,布が濃く染まることを確認できた。また,MC-dyeを用いる染色法と高温高圧染色法により作製した三原色の染色試料で,両者とも同様な耐光性を示した。さらに,三原色染料の配合割合を変えた13種類の染色試料の色相を両染色法で比較した結果,大きな色相差は両者間で見られなかった。
研究成果
MC-dyeを用いて,ポリエステル白布を連続的に染めることができた。また,MC-dyeを用いる染色法と通常の染色法で作製した染色試料において,耐光性と色相に差は見られなかった。これらのことから,MC-dyeを用いた染色法の実用化は,十分可能であることがわかった。
論文投稿
繊維学会誌 2002 Vol.58 No2 p.68-72
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