技術ふれあい’98
石炭灰による断熱材への応用
丸越工業株式会社
 品質保証部 福田 貴之

■技術開発の背景

 当社の本社工場がある七尾市では、平成7年3月より七尾大田火力発電所1号機、50万kWが操業しております。また、平成10年の7月より2号機、70万kWが正式稼働致しました。この火力発電所1号機から出る毎日400〜500トンの石炭灰のほとんどは現在セメントの原料として、太平洋岸のセメント会社へ船で運ばれておりますが、2号機で発生するであろう毎日700〜800トン程度の石炭灰についてはセメントの原料としての用途しかないため、他産業、特に地場産業への転用方法が大きな課題となっております。
 このような状況下で、この地元で継続安定的に発生する石炭灰を有効活用すべく、当社で製造中の耐火断熱レンガやセラミックボールの原料として利用することを考えました。

■技術開発の内容

 石炭灰の主成分はシリカとアルミナであり耐火粘土と類似していますが、石炭灰を高温焼成するとクリストバライトの発生が多く、従来は耐火物原料としての使用が困難でした。しかし、水酸化アルミニウム等を加えることによって、クリストバライトの発生を抑制できるため、実用化の可能性が出てきました。

1)石炭灰について
火力発電所において微粉炭を焼成したとき、約13%の石炭灰が発生します。
2)水酸化アルミニウムの添加による効果について
クリストバライトは 急激な温度変化では不安定で、水酸化アルミニウムを添加することにより、ムライトを生成し、熱的に安定し、実用化が可能となりました。
3)セラミック中空ボールの開発
当社の独自な中空成型技術で少量の無機耐火粘土と石炭灰を球状に成形、これを1300℃で高温焼成し、石炭灰を中空セラミック化させ、高温にも耐える断熱材の開発を行  いました。

■今後の展開

 石炭灰は小さな細孔が多いため、河川水、生活排水等の大量の水の水質浄化ろ過材としても効果を発揮するものと思われます。菌を坦持させる触媒坦体、大気浄化用、排ガスフイルター、高性能吸着材、吸臭材としても利用が可能です。カサ比重が小さいという特徴を活かし、建築産業の軽量骨材とし、また1,300℃の高温焼成をしていますので、高温にも耐える蓄熱量の少ない断熱材等への幅広い分野でも使用が期待できます。
 石炭灰を原料としていることより、地球にやさしい商品に付ける事が許されるエコマークを近々取得予定です。
 今後とも、地元で安定的に発生する資源を有効活用した新製品の開発を積極的に進めていきたいと考えております。


代表者名 代表取締役 木地 一郎
住所 〒926-0171 七尾市石崎町ヌ部69
TEL 0767-62-2311 FAX 0767-62-2851

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