太陽光発電システムの構築
[情報指導部]   塚林 和雄 中村 靜夫
[製品科学部]   奥野  孝  
[管理部]   能口 廣志  
[化学食品部] 吉村  治  

1.目的
 地球環境問題への認識の高まりから石油代替エネルギーの開発が進められており、中でも保守が容易で無人化が可能、エネルギー源が無尽蔵なクリーンエネルギーである太陽光発電システムが注目されている。
 石川県では平成8年度に「地域新エネルギービジョン」を策定して、環境にやさしい多様なエネルギー源の活用を目指し積極的に取り組んでいる。金沢地域においては、太陽光発電を新エネルギーの中心に位置付けており、この構想を基に、石川県工業試験場では新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との共同研究で実験棟屋根に200kW太陽光発電システムを導入した。しかし、石川県等積雪地域において太陽光発電システムの設置は不利と考えられているため、太陽電池に逆電流を流すことが可能なシステムを採用した。このシステムは冬季間の融雪を目的としており、本事業で初めて実稼動する。

2.概要
 設置した太陽光発電アレイを写真1に示す。太陽電池アレイの最大発電出力は209,280Wpであり、南北両面に屋根面と同一角度の16.7°で均等配置されている。設置に際しては、耐震性並びに1.5mの積雪荷重に十分耐えることを考慮し、築14年経過した既存屋根への設置を十分配慮した。また、屋根との一体的デザイン化を図り、違和感を与えないように工夫している。
 システムは高圧系統連系方式(逆潮流あり)を採用した。図1及び表1にそれぞれ発電のしくみ、システムの特徴と仕様を示す。システムは太陽電池モジュール、架台、接続箱、インバータ、連系制御盤、データ収集装置及び表示装置等により構成され、運転は全て自動で行われる。太陽電池で発生した直流電力は、インバータにより交流電力に変換され、受変電設備を通して、工業試験場の管理・研究棟及び実験棟の電源として使用されるが、余剰電力が発生した場合は、電力会社に供給される。降雪期には、太陽電池上に積もった雪を除去するため、商用電力を利用し融雪を行う。また、太陽電池モジュールはシャープ株式会社製であり、大屋根には多結晶、中央上部の越屋根には単結晶シリコンを採用した。インバータには、古河電気工業株式会社製30kW容量6台、10kW容量2台の計8台を用いた。この内、全ての30kWインバータは双方向型で逆通電可能である。通常よりインバータ台数が増加しているが、これにより融雪位置をコントロールすることが可能となっている。

表1  太陽光発電システムの特色と仕様
石川県工業試験場の太陽光発電システムの特
  既設の屋根に太陽電池を設置
太陽電池を南面のみならず北面にも設置し、積雪地域の発電データを収集解析
積雪防止に、融雪機能を付加
太陽光発電システムの仕様
太陽電池    
多結晶シリコン 寸法・枚数 1,200mm×802mm×46mm 1,608枚
最大出力 192,960W(融雪用60kWを含む)
変換効率 12.5%
単結晶シリコン 寸法・枚数 1,200mm×802mm×46mm 120枚
最大出力 16,320W
変換効率 14.1%
系統連系盤    
連系保護機能装置
インバータ
双方向型  
出力電圧 三相3線210V
定格出力 200kW(30kW×6台、10kW×2台)
電力変換効率 90%
出力基本波力率 0.95以上

 

3.まとめ
 NEDOとの共同研究「平成9年度新エネルギー発電フィールドテスト事業」公共施設等用太陽光発電フィールドテスト事業において、工業試験場実験棟屋根に我が国では最大級の200kW太陽光発電システムを設置し、平成10年4月1日から本格稼動を開始した。日本初の試みとして、積雪地域での冬期発電効率を向上させるため、融雪機能を付与した。今後、融雪機能に関する実証化研究や、実際の負荷の下で長期運転を行い、各種データを収集・分析することにより広く社会にPRし、普及促進に向けて啓発活動を行っていく。さらに融雪研究を通して産学官連携を深め、関連分野の技術開発を目指す。


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