電磁波評価試験機器の紹介と技術指導事例
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1.目的
電子機器から放射される電磁波は、周辺機器の誤動作等の原因となることがある。この誤動作には、予期しない運転の開始や停止、速度の変動、あるいは信号処理のミスなど様々なものがあり時には大事故につながる場合がある。国際無線障害特別委員会(CISPR)では、製品が放射する電磁波を抑制するためその強度に限度値を設定した。国内では情報処理装置等電波障害自主規制協議会(VCCI)による自主規制を設け、企業はこれらの限度値以下になるよう製品の電磁波対策を講じている。
本報告では、県内企業から持ち込まれる製品の放射電磁波を評価するために設置された電波無響室と評価機器を紹介し、実際に企業が対策を行った事例を紹介する。
2.内容
2.1 電磁波評価試験機器の紹介
有効寸法 WxDxH | 8x5x6.3m |
サイトアッテネーション | ±3dB以内 |
シールド率(平面波) | 100dB以上 |
最大供給電源 | φ3,200V,70A φ1,200V,50A 50/60Hz |
ターンテーブル径 耐荷重 |
φ2m 3t |
電波無響室は電波暗室、あるいは電波無反射室とも呼ばれ、室外からの電磁波を遮蔽し、室内壁が電磁波を吸収する構造となっている。従って、外来の電磁波の影響が無く、室内壁での多重反射が無いため、製品そのものの電磁波評価が可能である。工業試験場では、平成8年度に表1の仕様の電波無響室を設置し業界支援に当たっている。
製品とアンテナとの距離によって3m法、10m法があるが、本電波無響室は3m法の測定が可能である。また、2m以内の製品が持ち込めるようになっており、製品の電源電圧、周波数も国内外の仕様に対応している。
室内には、表2に示す測定装置が整備されており、製品から放射する電磁波強度測定と、表3に示す装置による製品の耐電磁波性能試験が可能でEMC(電磁両立性)対策を行うことができる。
装 置 | 仕 様 | メーカ |
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テストレシーバ | 9kHz〜1GHz、QP、AV検波 | ローデシュワルツ |
スペクトラムアナライザー | 100Hz〜1.8GHz | ローデシュワルツ |
各種広帯域アンテナ | 26MHz〜18GHz | シュワルツベック、 ECOM |
擬似電源回路網 | 9kHz〜30MHz、最大電流16A | ローデシュワルツ |
装 置 | 仕 様 | メーカ |
---|---|---|
静電気放電 | 最大電圧30kV | (株)ノイズ研究所 |
放射電磁界 | 最大電界強度10V/m以上 | (株)東陽テクニカ |
ファーストトランジェントバースト | 最大電圧4.5kV | (株)ノイズ研究所 |
雷サージ | 最大電圧15kV | (株)ノイズ研究所 |
高周波伝導 | 最大重畳電圧10V以上 | (株)東陽テクニカ |
2.2 技術指導事例
電波無響室や測定装置は開放試験設備として企業が自由に使えるようになっており、これら装置使用法や電磁波対策の技術指導を行っている。
表4に実際に対策した事例の一部を示す。電磁波対策事例には、筺体の電磁波シールド強化、電源・信号線へのフィルター挿入、回路基板設計の変更などがある。
企 業 |
製 品 | 症 状 | 対策措置 |
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A 社 | 位置検出装置 | RS-232C通信ケーブルから電磁波が多く発生している | フェライトビーズコアの挿入 |
B 社 | 制御用表示装置 | 装置からの電磁波成分が多い | 筺体のシールド性能向上 |
C 社 | コンピュータ 回路基板 |
特定周波数に高強度のノイズがある | バイパスコンデンサの挿入 |
D 社 | 水晶発振回路 | 装置からの電磁波成分が多い | 筺体開口部の設計変更 |
E 社 | 製品検査装置 | 電源線から高強度の伝導性ノイズが出ている | ノイズカットトランスの使用 |
F 社 | 医療機器 | 機器のシールドしていない箇所から電磁波が放射している | ノイズ対策部品の挿入 |
3.結果と今後の活動
(1)電磁波対策は周波数が広範囲であり不安定であるため、試行錯誤的に実施しているケースが多い。
(2)電磁ノイズ障害研究会」を発足し、電磁波対策情報の提供を行っているほか、石川トライアルセンターと共同で講習・講演会を開催しており、電子技術の変化に対する支援体制の強化を図っている。
謝 辞
本報告を行うにあたり、対策事例として快くデータを公開していただいた関係企業に深く感謝の意を表します。
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