極薄素材のレーザ溶接技術


はじめに
 パソコンや携帯電話などのように,最近の工業製品は軽薄短小化の一途をたどっています。使用される素材や部材はますます薄く微細になり,製造工程の一つである接合に関しても対応が求められています。県内でも,従来のアーク溶接やプラズマ溶接では不可能な極薄板材の高精度で微細な溶接が,高付加価値の接合技術として関心を集めています。
 このような現状から,大阪大学接合科学研究所と共同で,高出力半導体レーザを用いた極薄板材の低コスト溶接に関する技術開発を進めています。ここでは,その技術について紹介します。
 
1.高出力半導体レーザ
 薄い板材や熱の影響を受け易い素材ほど溶接時の高温部分をできるだけ狭くする必要があります。これには,熱を精密にコントロールできるレーザ溶接が最も有効です。しかし,溶接に使用されているレーザは,一般的に高価で消費電力が大きいため,加工コストが高くなり,利用は一部に限られているのが現状です。
一方,電力効率が高く,安価で小型のレーザとして半導体レーザがあります。これは,CD やMO,DVDなどの情報機器に広く使用されています。しかし,出力が低いために材料加工には不向きなものでした。最近,これを克服するため,複数の半導体レーザからの光を結合して出力を高める技術の開発が進み,加工用レーザとしての道が開けてきました。
 
2.薄板材の接合技術への応用
 極薄板材の接合に対する高出力半導体レーザの適用を検討するため,同レーザを組み込んだ接合システム (図1参照)を共同製作しました。これまでのレーザ溶接機と比べて遙かに小型です。厚み0.05oのステンレス鋼を溶接した結果,図2に示すように溶接時の溶込み幅を0.1o程度に抑えた精密で良好な溶接が可能となりました。
 このように,小型で安価なレーザを利用して,従来の溶接方法では不可能な極薄板材の溶接を低コストで実現したことは,実用化上重要であると考えられます。
 今後は,県内企業への技術移転を視野に入れながら,半導体センサや金属ベルト,ベローズ配管等の製造に利用するための応用研究を実施する予定です。こうした技術にご興味のある方はお気軽にお問い合わせ下さい。
高出力半導体レーザ接合システム
図1 高出力半導体レーザ接合システム
(a)レーザ照射側 (b)裏側
(a)レーザ照射側   (b)裏側
図2 レーザ溶接部観察結果
(出力50W,速度10m/min)


担 当 機械電子部 舟田義則 (ふなだよしのり)
専 門 レーザ加工,精密測定,材料強度評価
一 言 誰もが気軽に利用できるレーザ加工技術の開発を目指します。


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